環境適合認証
(ECC : Environmental Compliance Certificate)
建設工事などのプロジェクトや工場を立ち上げる場合などに環境適合認証(Environmental Compliance Certificate : ECC) や適用範囲外証明書 (Certificate of Non-Coverage : CNC )などの申請を環境天然資源省環境局 (Department of Environment and Natural Resources - Environmental Management Bureau : DENR-EMB)に行う必要があります。
この手続きは建設工事や工場の立ち上げなどのプロジェクト開始要件であり、ECCの取得を経て他の政府機関や地方自治体(Local Government Unit : LGU)への申請を行うことができるようになるため、ECCの取得は事業開始前の重要手続きの一つとなります。
必要書類一覧
- 事業説明書
- ECC申請書
- 定款および付属定款
- 環境への影響計画書
- 廃棄計画書
- 下水道計画図面、工場図面(両方A3)
- 大気汚染防止計画図面(A3)
- プロジェクトサイトのジオタグ付き写真
- プロジェクトサイトの近隣からの苦情のない旨の宣誓供述書
- 推定事業規模(事業や製造物の大きさ)
- 事業に必要な資金所有の証明書
環境天然資源省管理局 (DENR-EMB)
環境天然資源省管理局(Department of Environment and Natural Resources - Environmental Management Bureau : DENR-EMB)の主な業務は以下の通りです。
1. 大気質管理
- 大気浄化法の制定
- 特定産業発生源のモニタリング
- マニラ首都圏の大気質モニタリング
- 大気質管理室の組織運営
- 酸性雨モニタリング
2. 水質管理
- 水質浄化法の制定
- 水質に関する環境利用税にかかるガイドラインの制定
- 河川、湖沼にかかる水質管理とモニタリング
3. 有毒化学物質管理
- 特定化学物質リストの制定
- 有毒性化学物質の生産及び輸入に関するガイドラインの制定
- 化学薬品輸入審査と許可発行
- 有毒化学物質管理令の制定 (アスベスト、オゾン層破壊性物質、水銀、PCB、青酸化合物等)
4. 有害産業廃棄物管理
- 有害産業廃棄物発生源事務所の登録受付
- 有害産業廃棄物発生源事業者の認定
- 有害産業廃棄物移動管理システムの運用と管理
- 共和国法第6969号の実施
- 有害物質を含む再生可能資源の輸入審査と許可
- 有害物質の発生及び処分のための輸出審査と許可
- バーゼル条約の実施
5. 一般固形廃棄物管理
- 一般廃棄物の技術ガイドラインの制定
- 地方自治体による一般廃棄物管理状況のモニタリングと支援
- パイロット事業の実施 (廃棄物処分場、リサイクル施設の設置)
6. 環境影響評価
- 環境評価制度 (Environmental Impact Statement)の制定と実施
- 環境適合認証 (Environmental Compliance Certificate : ECC)の発行
7. 公害紛争の裁定
- 公害紛争最低委員会の設置
- 公売認定事業者の立ち入り検査
- 公害認定事業者に対する罰則 (操業停止、罰金)の適用
8. 環境研究開発
- 環境モニタリング
- 環境試料分析
- 環境試料分析方法の開発と審査
- 民間及び政府系環境ラボの審査とDENR認定
9. 情報公開
- 環境教育プログラムの開発と実施
- 広報活動
申請可能な手続き一覧
- ENVIRONMENTAL COMPLIANCE CERTIFICATE (ECC)
- ENVIRONMENTAL IMPACT ASSESSMENT (EIA)
- Environmental Performance Report and Management Plan (EPRMP)
- Environmental Risk Assessment
- Due Diligence
- Project Management
- Certificate of Non-Coverage (CNC)
- National Water Resources Board (NWRB)
- Permit to Operate (PTO) Air Pollution Facility Installation
- Laguna Lake Development Authority (LLDA) Clearance
- Laguna Lake Development Authority Discharge Permit
申請手続き
環境適合認証
(ECC : ENVIRONMENTAL COMPLIANCE CERTIFICATE )
環境適合認証(Environmental Compliance Certificate : ECC)とは、環境天然資源省環境局 (Department of Environment and Natural Resources - Environmental Management Bureau : DENR-EMB)に申請することによって発行される文書を指します。この手続きは建設工事などのプロジェクト開始要件の一つであり、ECCの取得を経て他の政府機関や地方自治体(Local Government Unit : LGU)からの承認を得た後に事業が開始されるため、ECCの取得は事業開始前の重要な手続きの一つとなります。
ECCを取得するために、プロジェクトの提案者は環境影響評価(Environmental Impact Assessment : EIA)手順を遵守し、計画プロジェクトがEIAを通じて環境に重大な悪影響を与えないことを示さなければなりません。 ECCはまた提案者が承認された環境管理計画の実施を証明します。
最も基本的なECCの保護手順は次のとおりです。
- 提案者は利害関係者や近隣の一般市民を含むプロジェクトに影響を受ける人々、および実施するEIAの技術的側面を評価するDENRの担当官と協議することにより、実施すべきEIAの範囲を定めます。
- 提案者はEIA調査を実施し、プロジェクトが環境に与える影響とサイトの環境の現状調査を実施します。
- EIA調査の結果に基づく報告書である環境影響評価報告書(Environmental Impact Statement : EIS)を作成します。
EISは、次の3つの一般的な基準によって評価されます。- 環境への配慮がプロジェクト全体の計画に反映されている。
- 実行可能であり環境緩和策が提案されていること及び環境対策が効果的であること。
- 社会的受容性を満たすこと。(一般市民の意見を取り入れた情報に基づいている。)
社会的受容性とはプロジェクトが市民の意見を十分反映したものであって、環境への配慮が住民に評価されていることを示す結果であり、ECC申請の必要要件の一つとして評価されます。
- プロジェクトが大規模または重要なものである場合、EISをDENR-EMBが評価した上で、それを改善するための変更や内容の追加や更新が要求される場合があります。この作業はEISがDENR-EMBの基準を満たすまで繰り返されます。最初に準備されたEISの品質が基準を大幅に下回る場合やEIAが不十分である場合は、基準を満たすまで訂正が繰り返されるためこの手順は時間と手間がかかる可能性があります。
- 最終的なEISは、承認のためにDENR-EMBに提出されます。プロジェクトが適格である場合、ECCが授与されます。
EIAの内容やボリュームや品質は、各プロジェクトの規模や種類に応じて異なります。たとえば、発電所は発電能力で分類され、家畜プロジェクトは動物個体の保有能力で分類され、道路は長さで分類されます。
プロジェクトのボリュームが多くない場合、またはプロジェクトが事業規模に関係なく環境に大きな影響を与えないと判断された場合は非カバレッジ証明書(CNC)を取得するだけで足りる可能性があります。プロジェクトが小規模であってもECCが必要な場合は初期環境調査(Initial Environmental Examination : IEE)と呼ばれる手続きが必要になる場合があります。
環境影響評価
(EIA : ENVIRONMENTAL IMPACT ASSESSMENT )
環境影響評価(Environmental Impact Assessment : EIA)は、プロジェクトのさまざまな段階(建設、試運転、運用、放棄)で、プロジェクトが環境(土地、水、空気、植物、動物、人)に与える可能性のある影響を予測および評価するプロセスです。またそのプロジェクトによる負荷から環境を保護するための適切な予防、緩和、および強化措置を検討し表明する必要があります。
環境影響評価(Environmental Impact Assessment : EIA)は環境天然資源省環境局 (Department of Environment and Natural Resources - Environmental Management Bureau : DENR-EMB)によって実施されています。このプロセスはフィリピン環境影響報告制度(Philippine Environmental Impact Statement System : PEISS)と呼ばれています。これにより、環境クリティカルプロジェクト(Environmentally Critical Projects : ECP)、および環境クリティカルエリア(Environmentally Critical Areas : ECA)という概念が生まれました。 EIAプロセス及びEISシステムの下でEISはECP毎に或いはECA管理下のプロジェクト毎に作成されます。 EISにはEIA手続きから識別されるプロジェクト履行時において予測される影響が含まれており、反復的なレビュープロセスを通じて、予測される影響とその緩和策が個別に評価され、影響値とその緩和措置における環境に与える最終的な影響が環境基準をクリアできると判断された場合、DENR-EMBは、プロジェクトの提案者によって準拠された環境適合認証(Environmental Compliance Commitment : ECC)を発行します。 ECCの発行をもって当プロジェクトは政府機関や地方自治体からの他の承認や事業許可の取得が可能となり事業開始の第一歩となります。
EIAの手続きは一般的に環境影響評価報告(Environmental Impact Statement : EIS)、環境対応実施報告及び管理計画 (Environmental Performance Report and Management Plan : EPRMP)、およびIEEの3種類に分類され、これらはすべて個別の準備手順と申請手続きを行う必要があります。
- 環境影響評価報告書(Environmental Impact Statement : EIS)はプロジェクトの主要サイトおよび周辺の土地、空気、水、生物相、および人口分布等の詳細な特性を確立する本格的な調査です。
- 環境対応実施報告及び管理計画 (Environmental Performance Report and Management Plan : EPRMP)プロジェクトが存在し、拡大する予定の場合は通常は過去3年〜5年間の環境への対応をまとめた報告書です。プロジェクトが進行中の場合はそのサイトや周辺への影響やその対応及びその結果報告です。
- 初期環境検査(Initial Environmental Examination : IEE)は本来のEISを要しない小型プロジェクトにおいて当プロジェクトが与える一般的な環境への影響等を明記した書類であり、本来のEIS手続きを大幅に省略した簡易版のEISです。
適用範囲外証明
(CNC : Certificate of Non-Coverage)
適用範囲外証明書 (Certificate of Non-Coverage : CNC )は、環境に与える影響が軽微である或いは深刻な影響を与えることはないと予想されるプロジェクトの環境適合認証(Environmental Compliance Certificate : ECC)に相当します。これらのプロジェクトは、フィリピンの環境影響評価システム(Philippine Environmental Impact Assessment System)の対象外と見なされていることなどからCNCはECCの簡易版の証明書と見なされています。
プロジェクトがDENR-EMBの適用分類仕訳 (Coverage Screening)において標準化された要件のカテゴリーDに該当する場合、当プロジェクトはCNCの対象と見なされます。
CNCの主な適用基準は次のとおりです。
- 当プロジェクトが環境に直接影響を与えたり環境汚染を悪化させることのないように計画されていること。
- 既存のECCがないか、ECCを必要とするプロジェクトに参加していないこと。
- プロジェクト予定地が国家統合保護区域 (National Integrated Protected Areas System : NIPAS)内でないこと。
- 有毒で危険な物質または物質を使用または保管しないこと。
ラグナ湖開発局認証
(LLDA : LAGUNA LAKE DEVELOPMENT AUTHORITY CLEARANCE)
Laguna Lake Development Authority(LLDA) CLEARANCEとは、管理管轄内でのプロジェクト/計画/プログラムの実行を承認する前にLLDAによって発行される証明書を指します(以下の図:LLDA管理マップを参照)。 これはラグナ湖沿岸地域を保護するLLDAの管轄であり、ラグナ湖沿岸地域は国の指定保護地域として地域内におけるプロジェクトに対する許可発行を有しています。(共和国法第4850号及び大統領令813修正)
マニラの南東にあるラグナ湖周辺に工場を設立する場合は、ECCの取得に加えてラグナ湖開発公社の認可(LLDAクリアランス)の取得が必要となります。
▲LLDA管理マップ