フィリピン中央銀行
(BSP : Bangko Sentral ng Pilipinas)

フィリピンの金融制度

フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas)は、1993年7月、新中銀法施行に伴い、旧フィリピン中銀(1949年設立)の業務を継承するかたちで設立されました。フィリピン中銀は、安定した持続的経済成長に資する物価安定の維持を主な目的とし、金融政策・信用政策、および銀行監督・規制を担っています。
フィリピン中央銀行(BSP)が銀行セクター及び預金を取扱う金融機関(ファイナンス・カンパニーや信用組合など)を、証券取引委員会(SEC)が銀行及び保険会社を除く金融機関(ファイナンス・カンパニーや証券会社など)を、保険委員会(Insurance Commission:IC)が保険会社等を管理監督しています。

銀行の種類

銀行の種類としては民間国内銀行、外国銀行、政府系銀行、貯蓄銀行、地方銀行、協同組合の6種類があります。

銀行 内容 法律
民間国内銀行
Private Domestic Bank
国内民間都市銀行 共和国法 8791号
政府系銀行
Government Bank
政府所有銀行 共和国法10574号
貯蓄銀行
Thrift Bank
中小銀行 共和国法 7906号
地方銀行
Rural Bank
地方銀行 共和国法 7353号
協同組合
Cooperative Bank
組合員が運営する銀行 共和国法 9520号
外国銀行
Foreign Bank
外国銀行 共和国法 7721号

民間国内銀行と外国銀行には商業銀行とユニバーサルバンクの2 種類があります。商業銀行には預金・貸出・信用状(L/C)発行・外国為替業務及び信託業務を行うことが出来ます。それに加えてユニバーサルバンクには投資銀行業務(ただし株式の引受・売買・取次ぎを除く)が認められています。

外国直接投資の登録

外国投資をフィリピン中央銀行(BSP)に登録を行わなければいけないという法的根拠は存在しませんが、登録を行うことにより配当金支払や投資資本の送還のためにフィリピンの金融機関から外貨を購入することができようになります。しかしフィリピンに進出する外資系企業の多くが本国企業への売上や仕入取引、借入を外貨で行っている場合が大半であり、ドルや円などの外貨を豊富に保有している状況となっているケースが多くあり、保有する外貨を使って配当や資本の本国還流を行う限りにおいて、市中銀行で外貨を購入する必要がなく、中央銀行への届出による効果はあまり感じられないことになります。またフィリピンへの投資や貸付に際して資金の送金の時期や送金内容が提出書類との間に矛盾が生じている場合は受理されないばかりか、外国投資法に違反している可能性を指摘され問題となることがありますので、申請前に専門家に確認をしてもらう必要があります。
また、BSPへの外国投資の登録はフィリピンへの送金日から1年以内に行なう必要があります。

フィリピン中央銀行(BSP)への
届出が必要な取引と必要書類

外国投資家が資本の再配分及び資本から発生した配当や利益、収益金を送金するために外国通貨を認可代理銀行などから購入する場合、外国投資を中央銀行(BSP)に登録しておく必要があります(外国為替取引マニュアル32条)。

貿易外取引 :通商、投資、貸付以外
(教育費用、医療費、旅費、国外居住者への支払いをする

金額に応じて以下の書類をBSPに提出する必要があります。
1,000,000 USドル超: 外貨購入申請書、証拠書類などの必要書類
1,000,000 USドル以内: 外貨購入申請書

貿易取引:輸入決済

金額に応じて以下の書類をBSPに提出する必要があります。
1,000,000 USドル超: 外貨購入申請書、証拠書類
1,000,000 USドル以内: 外貨購入申請書

資本取引・親子会社間の金銭貸借(親子ローン)

資本取引:1年以内にBSPへの登録が必要
短期借入:30日以内にBSPへの登録が必要
長期借入:6か月以内にBSPへの登録が必要

BSPに届出及び登録された外国投資は資本の再配分や配当、利益、収益金の国外送金をするために許可代理銀行での外貨取得が認められます(外国為替取引マニュアル40条1項、2項)。
また外国資本による対内直接投資は、必ずしも円やドル建てでフィリピンに送金してきて、銀行の口座に送金されてきた外国通貨を預金しておくことが出来ると同時に必要に応じて引出したり、必要な分だけをペソ転することも可能です。

必要書類一覧

  • 申請書
  • 送金証明書(CIR)
  • SEC登録証明書
  • 定款・付属定款
  • 財務役による入金完了の宣誓書

2021年9月13日付でフィリピン外国為替規制の改正に関する通達(BSP Circular No.1124)が発表されました。今回の改正では外国為替取引の要件簡素化や手続のオンライン化・電子化による規制緩和を目的としたものであり、主な内容は以下の通りとなります。

以下の取引について、BSPの事前承認なしで銀行が外貨を販売することを許可されることとなりました。

  1. 電子商取引の市場参加者によるデジタル決済、電子取引
  2. 外国為替取引における居住者間、居住者と非居住者との間の貿易・非貿易取引の債権債務の相殺
  3. 非貿易取引のうち、海外にいる扶養家族の生活費や医療費
  4. エンジニアリング・調達・建設契約において提供されるサービスに伴う商品や資材の輸入取引
  5. 外国からの借入金が中央銀行に報告されていることを条件とした手数料の支払い
  6. 外貨借入の承認及び登録、対内投資の登録、その他外貨販売に関する申請書類のBSPへの電子提出と電子署名。