外資規制

フィリピンは、東南アジア諸国の中でも外国直接投資(Foreign Direct Investment : FDI)に対して最も高い参入障壁を持つ国の一つであると考えられています。外国人に特に有名な例としてフィリピンでの土地などの不動産購入に関する規制があります。その他の規制として最新の第11次ネガティブリスト(11th Foreign Investment Negative List : FINL)では、外国投資の規制と外国人による専門的職業の制限、外国資本の参加が制限されている特定の投資分野/活動について規定していますが、それらは防衛、公衆衛生や公序良俗の問題、国内産業の保護、または憲法上の理由などによるものです。数年ごとにNational Economic and Development Authority(NEDA)がネガティブリストの見直しを行い、大統領令の承認を経て最新のリストが公布されます。直近のネガティブリスト(2018年10月29日公布)はドゥテルテが大統領となってから最初のものであり、修正内容は彼の意向を反映してフィリピンをより多くの外国直接投資(FDI)に門戸を開き、「ビルド、ビルド、ビルド」キャンペーンを奨励しようという政策に沿った内容となっています。

最新のネガティブリスト(FINL)の主な変更点は以下の通りです。

以下の業種について100%の外国人資本による
参入が許可されました。

  • 「マスメディア」を除くインターネット事業。
  • 高等教育で教科が特定科目(政府系委員会または司法試験など)以外のもの。
  • 正式な教育カリキュラム(TESDAまたはCHED)ではない短期かつ高等レベルのスキル開発に従事しているトレーニングセンター。
  • 保険査定会社
  • ファイナンス会社
  • 投資会社
  • ウェルネスセンター
  • 公益事業免許を必要とするBOTプロジェクトの提案、施設運営。

リストA:
憲法及び特別法により外資規制の対象となる項目

外国資本の
出資比率
事業内容
禁止分野
(禁止分野に該当する事業はいかなる場合も外国人による投資や就業が禁止されています。)
  • マスメディア(レコーディング・インターネット事業を除く)
  • 専門職(放射線・レントゲン技師・犯罪捜査・弁護士・船舶航海士・船舶機関士)
  • 払込資本金が20万USドル未満の小売業
  • 民間探偵業
  • 警備会社運営及び警備員
  • 群島内、領海内、排他的経済海域内の海洋資源の利用及び河川・湖沼内の天然資源の小規模利用
  • 核兵器の製造・修理・貯蔵・流通
  • 協同組合
  • 今日規模採掘
  • 闘鶏場の所有と運営
  • 生物・化学・放射線兵器・対人地雷等の製造・修理・貯蔵・販売
  • 爆竹その他の花火類の製造等
25%以下
  • 民間人材紹介業
  • 防衛関連施設の建設
30%以下
  • 広告関連業
40%以下
  • 国内により資金拠出された建設、修理などの公共事業
  • 天然資源の採掘・開発・利用
  • 私有地の所有
  • 公益事業(ただし発電や電力供給・公益事業に該当しないその他の事業を除く)
  • 教育機関(ただし宗教団体により設立されたもの、外交官などの外国人の一時的な滞在者のための機関、公的教育の一部を形成する教育機関を除く)
  • 米・とうもろこし関連事業(小売業を除く)
  • 国有企業・公営企業への原材料や商品の納品
  • コンドミニアムユニットの所有
  • 民間ラジオ局の運営

リストB:
安全保障、防衛、公衆衛生及び公序良俗の維持、
国内産業の保護を理由とした外資規制項目

外国資本の
出資比率
事業内容
40%以下
  • フィリピン国家警察(Philippines National Police : PNP)の許可や承認を要する品目の製造、修理、管理、販売
  • 火器(銃器類)、火器の部品や弾薬・火薬、火器の使用に必要な機材や火器の製造に必要な設備等
  • 火薬・爆薬・起爆剤
  • 爆薬の材料や起爆に必要な材料・薬品等(塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、硝酸アルミニウム、硝酸カリウム、硝酸バリウム、硝酸銅、硝酸塩、硝酸カルシウム、赤銅鉱、硝酸、ニトロセルロース、塩素酸アンモニウム、硝酸エステル、グリセリン、無定形リン、過酸化水素、硝酸ストロンチウム、トルエン、コバルト)
  • 赤外線照準装置
  • PNPが定めるその他の品目国防省(Department of National Defense : DND)の許可や承認を要する品目の製造、修理、管理、販売
  • 重火器、爆薬
  • 兵器及び兵器関連部品(地雷、魚雷、機雷、爆弾、グレネード、ミサイル)
  • 火器管制装置
  • 戦車、戦闘機、軍艦及びその部品
  • 軍事用通信機器
  • 放射線装置及び部品
  • DNDが定めるその他の品目毒物や危険薬品の製造、保管、販売サウナ、スチーム風呂、マッサージクリニックなど、公序良俗や道徳に抵触する可能性のある事業闘鶏場やレース場などの賭博場の運営払込資本金20万USドル未満の国内市場向け事業払込資本金10万USドル未満で先端技術を有する又は50人以上のフィリピン人を雇用する国内市場向け企業

外国人が就業可能分野

自国でフィリピン人に対して就業が認められていない場合を除き、外国人に就業が認められる分野

1. 医療・看護

医療技術、医薬呼吸療法、助産師、看護、栄養士、歯科、薬局、理学・作業療法士、検眼

2. 農林水産業

農業、漁業、林業

3. 工学

航空工学、農業生物工学、金属工学、衛生工学、測地工学、化学工業、造船工学、土木工学、電子工学、機械工学、電気工学

4. 専門職

会計士、電気技師 、建築、小中高校における教職、指導およびカウンセリング、通関業者景観設計、図書館司書、配管工、不動産業、インテリア・デザイン、環境計画、社会事業、その他の専門職

5. 学術

鉱山学、地質学、獣医学、化学、心理学

関連する専門職法規に従うことを条件として、法人形態での参入が認められる分野

1. 農林水産業

林業

2. 工学

航空工学 、農業生物工学、衛生工学、造船工学、電子工学

3. 専門職

建築、指導およびカウンセリング、景観設計、不動産業、インテリア・デザイン、環境計画、社会事業

4. 学術

化学、心理学

土地所有の禁止

土地の所有はフィリピン人に限定され、法人が土地を所有する場合は、フィリピン人が資本の60%以上を所有しなければなりません。
外国企業が進出する際は、土地保有会社を外資40%以下で設立した上で、製造現地法人がリースを受けるという形態が一般的です。

資本金

払込資本金額が 250万ドル以上の小売業でなければ、進出することができません。場合によっては、親会社の純資産が2億ドル以上という条件もあり、進出は一部の大手企業に限られている状況です。外食産業も進出していますが、その大半がフランチャイズ契約を現地企業と交わす方法となっています。