不動産登記と法律
土地にかかる法律
フィリピン共和国憲法により、フィリピンにおいて土地の取得が認められているのは下記に制限されています。
- フィリピン国籍を持つ個人
- 外資比率が40%以下のフィリピン内国法人
すなわち外国人や外国法人、外資比率が40%を超える内国法人は土地の取得ができないと定められています。また、土地の所有権やその他の権利の執行や喪失等についての規定は民法に定められています。 民法に規定される内容は、
- 契約による譲渡・贈与・相続
- 土地の賃貸借
- 土地の抵当権の設定
- 登記の効果など
建物にかかる法律
建物の取得については、厳格な外資規制は存在しませんが、外国人や外国法人が事業用に建物を取得する場合は、その外国人や外国法人が建物を保有し、事業を継続できるだけの十分な資力や意思があることを客観的に示す必要があります。建物その他の付属物を土地とは切り離して別の不動産として取り扱われます。土地の所有者が建物を別個の不動産として所有権を切り離すことにより贈与や譲渡により所有権を移転させることが可能であり、土地の所有者でない人がその土地の上に新たに建物を建築することができます。
一般的な不動産の賃貸借
民法に規定されている不動産の賃貸借の規定は以下の通りです。
- 99年を超える賃貸借はできない。
- 登記局に賃貸借を登記することができ、登記することにより第三者に対抗することが可能となる。
- 賃借人が賃貸借にかかる法的主体と権利義務を第三者に譲渡するには賃貸人の同意が必要となる。
- 契約に明記されていない限り、賃借人は不動産を転貸することが可能である。
外国人による不動産の賃貸借
外国人が不動産を事業用不動産を賃貸借する場合は、外国投資家賃貸借法(Investor’s Lease Act)に従い、賃貸借契約を締結する必要があります。
外国人や外国企業、外資比率が40%を超えるフィリピン内国法人は、工場の建設、工業及び所業用の土地開発、それぞれの事業活動のために、長期にわたり土地の賃貸借を行うことは可能ですが、一般的な賃貸借とは異なり、以下のような制限が設けられているので注意が必要です。
- 50年を超える賃貸借はできない。(ただし、25年以内の期間の更新については1回に限り認められる)
- 用途は、申告された目的にのみ使用可能となる。
- 合理的に必要と認められる面積であること。(著しく過分な土地の使用は認められない)
- 利用に際して政府機関の承認を得る必要がある。
抵当権
フィリピンにおいて、不動産に設定される権利は抵当権が一般的です。
抵当権とは、抵当権設定者と抵当権者の合意により設定することができます。抵当権者が抵当権を設定すると当初所有権証明書(OCT : Original Certificate of Title)又は、権原譲渡証書(TCT : Transfer Certificate of Title )に記載されることとなります。しかしながら、抵当権設定者が債務不履行に至った場合は、その抵当権を持って自動的に所有権が抵当権者に移転されるのではなく、担保権実行手続きを執る必要があります。一方で、抵当権の設定を理由として抵当権設定者による不動産譲渡を禁じることはできません。
抵当権実行手続きとは、競売により不動産が処分されることを指します。その処分代価は優先的に被担保債権の弁済に充てられることとなりますが、その弁済をもってしても債務の返済に不足が生じる時は、債務者に直接支払い請求することとなります。
不動産登記
フィリピンの不動産登記制度は、トレンス・システム(Torrens System)が採用されており、登記上の権利者に対して国が各土地について取り消し不能の権利を保障しています。 実際の登記は、登記局 (Deed of Registry)という政府機関が土地の権利にかかる手続きや書類の保管を行っています。
土地を譲渡した場合、1.譲渡を証する書類、2.譲渡代金払い込みを証する書類、3.譲渡人が保管している当初所有権証明書(OCT : Original Certificate of Title)などを登記局に提出する必要がありますが、その前段階として譲渡契約にかかる印紙税や譲渡税の納付とそれを証明するCARの取得や市役所への届出を行っておく必要があります。それらの手続きを行った後、登記局より新たに譲受人名義の権原譲渡証書 (TCT : Transfer Certificate of Title )が発行されます。
賃貸借や抵当等、土地にかかる各権利関係の注記は、それら理由がわかる契約書の原本を登記局に提出することで登記することができます。